人づきあいのストレスを減らす境界線の設定

セルフケア

境界線の設定

境界線の設定とは自分と他人を分ける境界線を意識してしっかり引くことです。

人づきあいの境界線とは?

境界線はなにかとなにかの境目になる線のことです。国境線、県境、敷地の境界なども境界線です。もともと大地には境界線などはありませんが、人間が後から線を引きます。そうすることで住み分けができたり、管理しやすく生活しやすくなるからです。自分の家に知らない人が入って来たら困りますから、自分の家はここから、という境界線がきちんとあります。国であれば外国の人や物は勝手に入ってこないようにして、国を守ります。

人間にとって一番ベースとなる境界線が、自分と他人とを分ける境界線です。自分自身と自分以外、自分と外側の世界を分ける境界線です。

自分と他人に境界線があるなんて当たり前のように思うかもしれませんが、実はこの設定が曖昧で薄くなっていることが多くあります。特に周りに振り回されやすい人や、人づきあいにストレスを強く感じる人の多くは、境界線の設定が曖昧になっています。

境界線は自分を守る

ベースとなる自分と他人の境界線をしっかりと引くことは、自分を守ることでもあり、同時に他人を尊重することでもあります。この境界線がしっかりしていて、自分と他人をきちんと分けて考えることが出来るとのは成熟している自立しているサインでもあります。

赤ちゃんと養育者は融合状態

子どものころは親と子の境界は薄く、赤ちゃんと養育者は境界がほとんどない状態でもあります。赤ちゃんが泣くと、養育者はおむつを変えたりミルクをあげたり、あやしたりと世話をします。痛がれば「痛かったね」と共感し、生きるか死ぬかも養育者にかかっている、一心同体の状態です。

だんだんと子どもが大きくなってくると親子の間でも、一人と一人の人間同士の境界線が必要になってきます。思春期の子どもの部屋に親が勝手に入ると怒られる、というのは「自分の領域に勝手に入ってほしくない」という、子どもの大切な境界線の表明でもあります。この境界線の設定が自立した人間として生きていくために必要です。

境界線が曖昧だと…

境界が曖昧な状態だと、他人の言いなりになってしまったり、依存的になったり、自分の権利やプライバシーが侵害されても怒ることが出来なかったりします。またはそれが当たり前のように感じて、侵害にすら気づかないこともあります。あるいは逆に相手の境界を無視して侵入し、他人を自分の思い通りにコントロールしようとすることもあります。

境界線への侵入とは?

境界線を侵入とは、相手の領域に了承を得ず入り込んで、自分の延長のように扱ったり、振る舞ったりすることです。誰かが了承を得ずにあなたのスマホを勝手に見て、「もっとこのアプリを使った方がいい」と中身を操作していたらどう感じるでしょうか?許し合っている仲でない限り、とても不快に感じます。もしそれを「やめて欲しい」と言えなかったり、「やめて」と言っても相手がやめなかったら、強いストレスになります。

また、よかれと思って相手に「もっとこうしなさい」「これはダメ」と指示をして従わせたり、相手のやるべき仕事を「私がやっておくわよ」と勝手にしてしまう、というのも侵入になります。

境界線が曖昧で薄い状態だと、他人にコントロールされやすい周りに影響を受けやすくなります。他人に振り回されやすく、「NO」が言えないため、対人関係で頻繁にストレスを感じます。

周りの影響を受けやすいと、精神的にも、行動においても不安定になります。他人が「良い」と言うものを選ぶ否定されるとすぐに心が折れてしまう、周りの期待通りに行動する、というように「自分がない」と感じられてきます。そして境界線が曖昧なもの同士でよく起こるのが依存的な関係です。

典型的な境界線の薄い関係

典型的な境界線が曖昧な依存関係を紹介します。

夫が妻に対して「家事をもっとこうしろ、ああしろ」と命令し、妻は言われた通りにしている。時々思うように妻が動かないと、夫が酷く怒る。妻は怒られないよう、夫の気分を害さないように、いつもおだてたり褒めたり、好きな夕飯を用意したりしてご機嫌取りをしている。妻のストレスがたまり、注文を断るようになったら夫は酷く落ち込んで「冷たい奴だ」「酷い嫁だ」「昔はこんなんじゃなかった」と言うようになった。妻の方も罪悪感が強くなってしまって、結局また夫に優しくしたり機嫌を取っているが、限界を感じてもう離婚したいと感じている。けれど言い出すと夫が怒ったり落ち込んだりするため、言えないで我慢している。

この典型的な例では、二人とも境界線が薄く依存的な関係になっています。妻は夫ににコントロールされている状態ですが、実は妻の側も、相手が望むことを先読みして、機嫌をとりつづけることで自分を評価してもらい、安全を確保しています。お互いにお互いをコントロールしているというような共依存的な関係で、線引きがなく融合しています。相手を尊重し合えない融合状態では暗黙のやりとりに疲れ、すれ違いが生じると相手への攻撃や被害者意識が生まれます。

世話をする側は相手の感情や気分を、自分が「よくしてあげなければならない」と常に責任を感じるようになり、気が休まりません。また、相手も「自分の気分が悪いのはお前のせいだ」と責任を相手に投げてしまうため、依存的な関係が固まってしまいます。

境界線はセキュリティ


境界線は、家のセキュリティみたいなものです。自分にとっていらないものや、安全でないものはきちんと締め出し、家族や友達など自分が中に入れたければ、自分の意思で自由に入れてあげることができます。

家に鍵がかからなかったり、きちんとした壁がなかったら、どんなものでも入ってきて荒らされてしまうという、とても無防備で不安な状態になります。きちんとした壁があって、閉めたり開けたりできるドアがあって、セキュリティがしっかりしているからこそ安心して暮らすことができ、疲れを回復するためにゆっくり休んだり、元気に自分のやりたいことができるのです。

境界線が曖昧で薄いという状態は、壁がない家で暮らしたり、鍵かからない状態という無防備な環境で暮らしているのと似ています。セキュリティのない家に住んでいたら、安心できないという感じが分かるのではないでしょうか。

適切な境界線を引く

境界線は強く高くあればいいというものではありません。自分にとって心地よい、適切な境界線を設定することが安全で健康的な対人関係をつくっていくために必要になります。

境界線は自分の意思でコントロールできていること、自由に設定できることが大切です。

たいてはお互いに暗黙の了解で、適切な境界線の設定が出来上がっていきます。無理がない、ちょうどいい関係性とは、お互いのちょうどいい境界線ができあがっているということです。

敏感な人と境界線

人よりも敏感だったり繊細な気質の人は人づきあいに疲れてしまい、人間関係が苦手、という人が多くいます。

空気をよく読み、ちょっとした相手の表情や態度、口調から少しでも、否定的な感じや批判的なが観察されると動揺したり傷ついてしまいます。また、共感性が高いため、他人の感情や気分を自分の事の様に感じてしまう傾向があり、境界線が曖昧になりがちです。

敏感な人の境界線が曖昧になっている時の特徴

  • 共感性が強すぎてニュースを見るだけでつらくなってしまう
  • NOと言えない、とても嫌だけれど断れない
  • 人の悪口や愚痴を聞いていただけで具合が悪くなる
  • 他人の世話やフォローが得意だが疲れてしまう
  • 自分を犠牲にしても相手に合わせる
  • 他人を優先しすぎて自分が体調を崩す
  • 機嫌が悪い人がいると自分が何とかしなくてはと焦る
  • 空気を読んで調整役に徹してしまう
  • 誰かの言いなりになったり、ひどく頼られたり、依存的な関係になりやすい
  • 周りの意見で自分の好みや興味がコロコロ変わる

敏感なタイプの人は、色々なことに気がつき、共感性も高いため、受けるストレスが人より多くなってしまいます。誰にでも優しい反面、相手を依存させてしまったり、過剰に世話を焼いてしまって相手が甘えて責任をとらなくなってしまう、という依存的な人間関係をつくってしまうことも多くあります。また、NOが言えずに我慢して、自分を犠牲にしても相手や周りに合わせて疲れてしまう、コントロールしたがる人に支配されてしまう、というような関係性をつくりがちです。

境界線を引いて自分を守る

敏感な人は他人に尽くすのは得意でも、自分を大切にしたり、自分のケアをするのが苦手な人が多くいます。境界線を引いて、自分の領域を守ると、ぼんやりと広がっていた「自分」という曖昧な輪郭がはっきりしてきます。

自分と他人は違う人間であって、違う考え方や感じ方を持っていて当然であるときちんと線を引いていきましょう。自分の中で、自分と他人を分けて考え、線引きを意識します。

「自分の感情は自分のもの」「相手の感情は相手のもの」

「私はこれが好き」「あの人はこれが好き」

意見や好み、感じ方は人それぞれ違います。無理に合わせる必要もなく、否定する権利もありません。

自分が感じるように感じ、好きなものを選び、行動する権利は誰もが持っています。

自分のハンドルを取り戻す

依存的な関係では、自分の感情も気分も、そして幸せかどうかも、他人の言動にかかっています。自分には力がない状態です。依存的な関係の作り方を脱していくと、自分の感情や思いを尊重し、選択し、行動し、自分で責任を持つようになるので、自分にハンドルが戻ってきます。

自分にハンドルが戻ってくると、自分で責任を取らなければならなくなりますが、他人の機嫌や感情に左右されて振り回されない、安定した自分の軸を持つことができるようになります。

依存しないということは自立するいうことです。自立するということは自由になるということで、責任が伴います。けれど、自立して自由な生き方の方が人間にとってはより、幸せや充実感、自己肯定感を感じられる生き方なのです。

変化は少しづつが鉄則

境界線を引く時に気をつけなくてはいけないのは、人間関係の中で急にバッサリと引かないということです。いきなり変化を起こそうと態度を変えると、相手は反発して引き戻そうとすることが多くあります。自分にとっても、大きな変化はストレスになり、リバウンドが起きやすくなります。変化は焦らず、少しづつ、スモールステップで進んでいく方が安定して、新しい習慣として身について定着していきます。境界線は少しづつ引いていき、だんだんと定着させるように日々繰り返し意識していきましょう。

©2021 ADOR(心理セラピスト/公認心理師・宮沢みか)

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